プロの立場からのエッセンシャルオイル選び (3回目)


プロの立場でエッセンシャルオイル選びについて語る記事の3回目です。
エッセンシャルオイルの品質については、その見分け方が「よくわからない」という方もいらっしゃることでしょう。
そのため、某アロマ団体による「認定精油」のマークの有無をチェックしたりしていませんか? 実はこれ、残念ながらオイルの品質を見分ける意味ではあまり役立つものではありません。
こうした認定は形式的(ボトルに植物の学名が記載されているか、といった程度)なチェックを受けているだけで、販売されているエッセンシャルオイルの成分構成などを分析したり、輸入元を確認したりといった、オイルの品質を検証・保証するような科学的な裏付けや検査は全く行われていないからです。
ではなぜこんな制度があるのか・・・仕組みは単純で、団体側は認定制度と認定料で権威と利益を得ることができ、メーカー側は団体の認定という一般消費者にアピールできるお墨付きを得ることができる・・・こういった相互の利益の依存関係が成り立っていることがその理由です。

では、何を基準に品質の高いオイルを見分ければ良いのか・・・自身で成分解析ができれば最も確実なのですが、これは現実的ではありませんので、メーカーや販売店に成分分析表を開示してもらって、これを確認するのが一番簡単です。仮に成分分析表の内容が自身でよく理解できない場合であっても、もし開示に応じてもらえない(つまり、メーカーや販売店自身がオイルの成分構成を把握せずに販売している)ことがわかれば、それは商品選択ための一つの基準・目安になりますね。
そしてドンドンと質問してみること。疑問に思っていることや不安に感じていることに対してオイルの特性を理解しながら専門家の立場より丁寧にアドバイスしてくれるメーカー・販売店なら、きっと安心して長く付き合っていけることでしょう。

ちなみにTea Tree Farmsは1999年の創業当初よりインターネット上で出荷商品の成分解析データを公開しています。当時はエッセンシャルオイルをネットへ販売している会社が大変少なく、もちろんこうした、出荷商品そのものの成分分析表(代表ロットのサンプルではない)をネット上で常時公開していたメーカーはTea Tree Farms以外に無かったように思います。

次回の記事では生産地に注目することで高い品質のエッセンシャルオイルをブランドに頼らずに見つけ出す方法についてお話しします。

プロの立場からのエッセンシャルオイル選び (2回目)


プロの立場でエッセンシャルオイル選びについて語る記事の2回目。
今回はブランドごとの香りへの取り組みの違いについて。
エッセンシャルオイルメーカーには主に「安定した香り」を重視したブランドと、香りを調整することなく生産地や生産年を明らかにしてそのままの姿で出荷するメーカーの2つに大別できることは以前の記事でもご紹介しました。
つまり、利用者はオイルの利用目的に応じて『そのメーカーが好む、変わらない安定した香りを基本とした商品』か、『ロットごとに香りに差異があるものの、化学的に解析された成分構成を重視した商品』か、これらから選択することになります。

さらに、化学的な分析を重視し厳密に管理しているメーカーではロット以外に「ケモタイプ」の区分が加わります。これは同じ種類の樹木・植物であっても生産地や土壌、生育環境、そして植物個体そのものの差異により、成分構成も香りも全く異なるエッセンシャルオイルが抽出されることがあり、これらを明確に区分する必要がでてくるから。このような場合、植物名だけで区分することが事実上無意味になってしまいます。
そのため、抽出されたオイルの特性を化学的に分析した上で「ケモタイプ」という分類を植物名にさらに加える必要が出てくるのです。具体滴な例として多くのケモタイプがあることで知られているのはローズマリーやニアウリのエッセンシャルオイルですね。

余談になりますが、実はティーツリーにも個体差があって、一般的なティーツリーオイルとは全く異なる成分構成のオイルが抽出される樹木があります。ただし、こうした木からオイルを抽出したとしても商業的な価値が全くありませんので、オイルが生産されることはなく、結果、ティーツリーオイルといえば抗菌成分テルピネン4オールが多く含有されるオイルが抽出される「テルピネン4オール・ケモタイプ」のオイルを指すことになりました。

エッセンシャルオイルメーカーにはこのように、エッセンシャルオイルに対する取り組みの姿勢に違いがあります。目的とする使用方法に応じて利用するメーカーを選んでみましょう。

次回の記事ではエッセンシャルオイルの品質の見分け方についてお話ししたいと思います。

プロの立場からのエッセンシャルオイル選び (1回目)


今回はエッセンシャルオイルオイルメーカーの担当者・プロの立場でエッセンシャルオイル選びについて少しお話しをしてみたいと思います。

オイル選びの際に必ず理解いただきたいのが「アロマオイル」との違い。アロマを楽しむのだから・・・という理由だけでこの種類のオイルを選択してはいけません。この「アロマオイル」。エッセンシャルオイル(精油)とは呼ばれずに実に微妙な名称なのですが、その多くは香りを楽しむことだけを目的としたブレンドオイルで、エッセンシャルのほか、合成された香料など、様々なものが加えられたオイルの総称です。
つまり「アロマオイル」とはアロマテラピーで利用されるような植物から抽出された純天然の「エッセンシャルオイル」ではなく、化学合成された香料を含めて、適度に心地よい香りだけに注目して作られた、お部屋の芳香剤と同程度という認識で良いかと思います。

また、水溶性エッセンシャルオイルというものも存在します。こちらは水に溶解させて利用できるよう、乳化剤を加えられたオイルで主に専用の噴霧器で使用するために販売されています。水で希釈できるため使い勝手が良いので、水を使って簡単に濃度を調整したいならこのようなオイルが選択肢となります。ただし、先に説明した「アロアオイル」を水溶化しただけのオイルもありますので、商品選びに際しては使用されているエッセンシャルオイルの種類やグレードについて、明確に説明されているものを選択することが重要です。

次回の記事ではエッセンシャルオイルメーカー・ブランドごとの香りへの取り組みの違いとケモタイプについてお話ししたいと思います。

レモンティーツリーオイルは『才色兼備』なエッセンシャルオイル


「レモンティーツリーってティーツリーオイルにレモンの香りを加えたものでしょ?」
数年前に実際にお客様よりいただいたご質問です。

実際のところ、ティーツリーとは異なる植物から抽出された、香りも成分構成も全く異なるエッセンシャルオイルです。
ただ、葉っぱの見た目が似ていることから(花の形はぜんぜん違うのですが)、レモンのような香りのするティーツリーという意味でこの名前が付けられたようです。

若干の抗菌効果も確認されていますが、このオイルの魅力はその香りの美しさ。レモン系の香りのオイルは多いですが、その中でも際立って良い香りと言え、さらに時間の経過による香りの劣化が進みにくい事もあって、大容量でもじっくり使えます。
そして優れた実用性も。魅力は極めて優秀な「虫よけ効果」を備えていること。ホホバオイルなどで3%程度に希釈するだけで、スポーツやアウトドア作業で手軽に活用できる「虫よけオイル」が簡単に作れてしまいます。

レモンティーツリーオイルは良い香りと優れた実用性を両立する『才色兼備』なエッセンシャルオイルです。

キレイな畑とオイルの品質の関係

あのティーツリー畑、汚いよね・・・
あれはちょっとマズいよね・・・
そんな私たちの会話が指すのは畑の中の雑草の有無。

ティーツリーはそのハーベストの際、この画像のように根本からバッサリと刈りとられ、エッセンシャルオイルが作られます。
野菜の畑なら雑草が野菜と一緒に出荷されることなどはないのでしょうが、ティーツリーの場合、刈り取ったティーツリーがそのまま蒸留器に入れられてしまいますから、雑草がたくさん混ざった「汚い畑」からできるのは雑草の成分が混ざったエッセンシャルオイルになってしまい、当然その品質に影響が出てしまいます。

一方でこれだけ広大な畑で雑草を除去しながらキレイな畑を維持することは大変な作業です。畑に牛やカモを入れて雑草を食べさせながら「除草」する農園さんもあったりと、皆さん、様々な工夫をしています。

ティーツリーオイルにはグレード・品質によってその生産者価格、そして店頭販売価格に大きな差がありますが、この差はこんな地道な農作業の結果、生まれてくるのです。

良質なキャリアオイルが引き立てる、エッセンシャルオイルの魅力


エッセンシャルオイルの希釈に用いられるのがキャリアオイル。エッセンシャルが揮発性のオイルであるのに対して、キャリアオイルは不揮発性のオイルである、という違いがあります。
こう表現すると何やら難しいようですが、オリーブオイルやごま油、天ぷら油なども不揮発性のオイルですのでキャリアオイルと同じカテゴリーに分類できます。

それならば「市販の食用サラダオイルやオリーブオイルでエッセンシャルオイルの希釈ができるのか?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。答えは可。しかし食用オイルは粘性が高くベトベトしている上、独特の臭いも強いので、マッサージオイルやアロマバスでの利用などには適しません。

アロマ用のキャリアオイルは食用のオイルとは異なりベトベト感や独特のニオイを抑え、かつ肌への使用を前提として肌に適した成分で構成されています。つまり食用のオイルとは全く異なります。この違いは市販の食用マカデミアナッツオイルと、Tea Tree Farmsで出荷しているコスメティックグレードのマカデミアナッツオイルを比較してみるとすぐにお分かりいただけることでしょう。

品質の良いキャリアオイルを選択すべき理由は他にもあります。たとえばマッサージオイルを作る場合、エッセンシャルオイルの濃度が1〜2%として、残り全てはキャリアオイルです。せっかく品質の良いエッセンシャルオイルを使っても、キャリアオイルの品質が悪ければ全てが台無し、ということになってしまうワケです。

一度に多量に使うキャリアオイルですからまとめて安く購入したいものですが、気をつけたいのが「酸化」です。キャリアオイルの種類によっては酸化が進みやすく、長期保存に適さないものもあります。こういった種類のオイルは「まとめ買い」には適しません。

Tea Tree Farmsではオーストラリア産のホホバオイルとコスメグレードのマカデミアナッツオイルアーモンドオイルを取り扱っています。これらは共に成分が安定しており、酸化しにくいオイルとして知られています。共に3年以上、常温で長期間保存する事が可能です。長期に保存が必要になる「まとめ買い」をする場合にはこのように酸化に強いオイルを選択する事をお勧めします。
ちなみに、オーガニックで無濾過のオリーブオイルも出荷していますが、こちらはご購入後1年以内に使い切っていただくことをお勧めします。

良質のエッセンシャルオイルを揃えたなら、キャリアオイルの品質にもこだわってみませんか。

あれっ?歯ブラシが壊れちゃった!・・・ティーツリーを使った歯磨きで気をつけたいこと


今回はスタッフ自身の体験談です。
歯肉炎が気になり、ティーツリーオイルを使った歯磨きを始めました。ティーツリーオイル配合の練り歯磨きを使うのが通常なのでしょうが、面倒だったことと、実験がてら歯ブラシに市販の練歯磨きとピュアなティーツリーオイル1滴をドロップして使用しました。

初日、2日目、3日目と順調に、口の中もスッキリして快適だったのですが、1週間を過ぎた頃から歯磨きの際に何やら異物が。これは抜けた歯ブラシの毛でした。そう、ティーツリーオイルの成分がスチロール製の歯ブラシの軸を溶解してしまい、そこからブラシの毛が抜けるようになってしまったのです。それでもしばらく使い続けていましたが、10日目ぐらいになると、多量のブラシの毛が一気に抜け出て、口の中がもう「毛だらけ」で大変なことに。。。
歯肉炎には確かに効果があったようで、口の中はスッキリしましたが、歯ブラシを壊してしまうという副作用を経験することとなってしまいました。
以降はティーツリーオイルの20%希釈オイルを使用することで、歯ブラシを壊すことなく、ティーツリーオイルを歯磨きで使っています。

オーストラリア産の「マヌカ」が引き起こした論争・・・精油ではなく蜂蜜の話ですが。


ティーツリーオイルと同様に高い抗菌効果で知られるのがマヌカ。ちょっと『個性的』な香りがしますので、香りを楽しむアロマ用途では使いにくいですが、人気のある商品の1つです。

ティーツリーファームズにはニュージーランドのマヌカ生産農園さんから直接入荷しています。

ということで、マヌカと言えばニュージーランド、というのが一般的な認識になっていましたが、最近オーストラリアでも生産が始まり、ちょっとした論争になっています。ただ、生産されているのはオイルではなく蜂蜜。
胃炎や胃がんの原因とされるピロリ菌への効果があるということで、日本でも人気のある、あの「マヌカハニー」です。

マヌカの木自体はニュージーランドだけでなく、オーストラリアにも「ジェリーブッシュ」という名前で自生しています。そして蜂蜜も生産されていました。
簡単に説明すると、このオーストラリア産の「ジェリーブッシュ」を「マヌカ」と呼び変えてオーストラリア産マヌカハニーの出荷を始めたのに対して、ニュージーランド側がマヌカハニーの国際商標登録を申請し、『商標侵害』とクレームを出している状態・・・
現状はオーストラリアでは普通にスーパーマーケットで「オーストラリア産・マヌカハニー」が購入できる状態です。

ハニーと比較するとオイルの生産量や市場規模とても小さなものですが、もしマヌカオイルの生産がオーストラリアで始まったとしたらどうなるのか、かなり気になります。

希釈されたティーツリーオイルを選ぶ理由


ティーツリーオイルに関しては、ティーツリーファームズにもピュアオイル3種のほか、20%希釈オイル3%希釈オイル、15%希釈の水溶液(水でうすめてつかえるティーツリーオイル)など、様々な種類の商品があります。

もちろん用途によってそれぞれに最適な商品があるのですが、今回はこの中で希釈されたティーツリーオイルを選ぶ理由についてお話をさせていただきましょう。

ティーツリーオイルは優れた抗菌効果があり、傷口の消毒や水虫退治、ニキビ対策などでも多用される一方で、希釈しないままに使用しますと体質によっては発赤や湿疹の原因となることが知られています。ただ、一般的にはその濃度が15〜20%であれば、こうしたトラブルは起きにくいと知られており、また抗菌用途としても十分な効果が期待できる濃度であることから、他社商品も含めてこの割合の前後で希釈された商品が一般的となっています。

こうした希釈オイルを最も安価に入手できるのはティーツリーのピュアオイルを購入して自分で希釈する方法。しかし、計量が必要なほか、希釈に適した、品質の高いキャリアオイルを入手する事が必要になるため、この分野に詳しい方にしかお勧めできません。
そのため、予めティーツリーオイルの希釈に適した、品質の高いキャリアオイルを使って作られた「20%希釈オイル」が便利な選択肢となるのです。
なお、「3%希釈オイル」はペット用(ただし、猫には使えません)です。傷口などの殺菌目的の用途を想定していますが、同時に体を舐めることにより、ティーツリーオイルの成分がペットの体内に取り込まれた場合においての安全性を考慮して、低濃度に希釈されています。

オーストラリアで起きたトラブルから学ぶ・・・エッセンシャルオイルを利用する際は適量を!

オーストラリアのある老人医療施設での出来事でした。ケアマネージャーの方がお風呂の湯船に入れたのはティーツリーのピュアオイル。
ティーツリーオイルには殺菌効果と共にスキンケア効果があると聞いたこのケアマネージャーは利用者の皆さんに喜んでもらおうと、ティーツリーオイルを使用したのでした。

通常、お風呂に入れるオイルの量は1〜2滴。しかしエッセンシャルオイルに対する知識の乏しかったケアマネージャーは「たくさん入れれば、より効果があるのではないか」と誤解し、数十滴に相当する量を入れてしまいます。結果、オイルはお湯に溶けませんから、湯面に浮かんだ多量のティーツリーのピュアオイルが直接肌に付着し、強い刺激と共に発赤や湿疹などのスキントラブルを引き起こしてしまいました。

別のケースになりますが、アタマジラミの駆除と予防のために朝晩、ティーツリーのピュアオイルを希釈しないまま毎日、子供の髪に塗布したケースがありました。この子供の場合、確かにアタマジラミの問題からは逃れる事ができましたが、髪はいつも荒れて枝毛や切れ毛が絶えない様子でした。

これらの事例を通じてご理解いただきたいことは、ティーツリーオイルにはスキンケア、ヘアケア効果がありますが、適量を超えて使用すると逆に作用する事があるということです。これはティーツリーに限らず、ラベンダーオイルにおいて多量に利用することによりかえって不眠症に陥るリスクがあるなど、他のエッセンシャルオイルにも共通で言えることです。
「たくさん利用すると、より高い効果がある」と考えがちですが、実際には適量の利用が一番効果的なのです。