たとえばAの木から収穫したミカンはいつも甘いのに、Bの木から収穫したミカンはいつも酸っぱい・・・
植物学上の分類では全く同じ樹木なのに、この様な違いがある、いわゆる「木の個体差」がある事は皆さん、経験的にもご存じかと思います。
果実だけでなく、同じ事がエッセンシャルオイルでも起こりえます。つまり「個体差」により、抽出されるオイルが大きく異なるという事実。
この「個体差」は樹木そのものの違いに加えて遺伝子レベルでの違い、生育環境、つまりその土地の土壌や水質、気候など様々な要素が相まって生まれます。そしてこの「個体差」はオイルの成分構成の違いとなり、時にそれは植物学的には全く同一でありながら、化学的な解析上はエッセンシャルオイル全く異なる、といった事態を引き起こします。どちらも同じ植物のオイルなのに、オイルは成分も香りも全く違う・・・これでは困りますので、植物の種類に加えて抽出されるオイルの構成成分に応じて更に細分化した「ケモタイプ」と呼ばれる分類がされる事になりました。このように細分化されたオイルではローズマリーが有名ですね。
実はティーツリーにも様々なケモタイプが存在しています。その中で、抽出したオイルに最も価値のあるテルピネン4オールを多く含有するタイプの樹木、つまり「テルピネン4オール・ケモタイプ」の木が商業生産に適したタイプの樹木とし唯一栽培され(もし仮に間違えて他のケモタイプを植えてしまうと商業的な価値は全くありません)、現在ではティーツリーの木がイコールで「テルピネン4オール・ケモタイプ」という状況が生まれました。しかしこれは栽培された木の話で森に自生するティーツリーの木にはこれ以外のケモタイプを持つティーツリーが存在しています。
時折、○○オイルには△△という成分が××%ほど含まれる、といった表現がありますが、これはケモタイプの研究が進んで栽培による商業生産が行われている場合にのみ通じる話。未だにエッセンシャルオイルの多くは十分な研究が進んでいないため、同じ名前のオイルであっても生産地や生産者、生産ロットによってそのオイルの成分構成や香りには大きな違いが存在している事を理解する必要があるのです。